先生

 以前は、自分ですべてをしているんだと思いたくて、先生の事を必要以上に言わないようにしていました。現実には、先生の上に自分がなりたっています。先生が、しゃべる手品の一つの道を作ってくれました。手品師は、昔からしゃべっていたんです。しゃべっていたけれども、それは、手品の範疇においてのおしゃべりでした。それを自由に解放したのは、先生だと思っています。現在は、おしゃべり手品師が随分と増えました。おしゃべり手品師という呼び方も市民権を得たように感じています。
 わたくしは、おしゃべり手品師です。先生の作り上げたものの上で踊っている自分をしっかりと表現するようになりました。「先生がいて自分がいる。」から、「今でも先生がいて自分がいる。」という風に変わってきました。何が違うって、「今でも」が違うんです。言わないようにしていた先生の事を、舞台で言うようになりました。なりましたといっても昨日、今日言い出した訳ではないんですが・・・。
 「今でも」先生のおかげで生きてます。

 

 ビデオが一般的になり始めた頃に死んでしまいました。記録らしいものがなにもありません。提供するより、提供されたい。